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活動的株主「カルパ−ス」の素顔 (上)
−ガバナンス戦略で新たに4億ドルを対日投資−
(2002年09月06日)
カルパ−スは2001年11月15日、プレス・リリ−スにて日・欧の企業に対して幅広くコーポレ−ト・ガバナンスの 観点から戦略的にチェックして、新たに17億ドルの株式投資を行うと発表した。カルパ−スは従来パッシブ運用でガバナンスを主張して来た が、今回は一部アクテイブ運用も取り入れ、会社側がカルパ-スのガバナンスに係わる要求を受け入れない場合、その会社への投資額を増加 させ影響力を高めると言う。英国を除く欧州企業に350百万ドル(約420億円)、日本企業には4億ドル(約480億円)がカルパ−ス流の 新たなガバナンスのタ−ゲットとして投資されるこことなる。以下はそのカルパ-スの素顔の記述である。
1.日米の株主意識の格差
歴史的にて日米の大株主が構成される経緯は著しく異なっている。つまり、本邦の歴史ある多くの上場企業は、会社設立時に賛同した 出資者(金融機関、素封家、地元有力産業、取引先等)が中心になり「株主」を形成してきた。このため大半の企業で仲間意識が強く、 大口株主として出資先企業の経営に対して「モノ申す」意識は殆んどなく、株主総会では白紙委任状を提出することが半ば慣例化し、 ある場合は美徳化されて来たのが現状である。一方、米国の企業は資金力が乏しい起業家に対して、そのビジネス・プランに賛同した 投資家が直接株式出資してきたところが多い。株式投資に伴うリスクを認識している投資家は自らの出資した資金を守るために、 定期的に経営陣にキチンとした「説明責任」を当然の株主権利として要求してきたし、不特定多数の投資家の資金を仲介する証券取引所も 「情報開示」の徹底を企業側が行なうようル−ル化してきた。

重要情報は極力トップが把握し、情報力の集中があればあるほど権力を強められる構造の日本企業と、オ−プンな経営に努めてきた米国の企業風土と比較して差があるのは、株主の観点からその権利と取締役会に対する意識に格差があるためと思われる。市場経済のグロ−バル化に伴い、米国流の「株主の権利」をカルパ−スは機関投資家の立場から日本企業に正面から「モノ申す」株主として、1990年代半ばからその株主活動を活発化しはじめてきた。
2.ウォール街の一つの見方
アメリカ人の社会で職場を変えることが昇進・昇給にもつながることが少なくないため、一生で数回転職することは珍しくない。一方でウォール街のインベストメント・バンクには20代に入社して得意分野を極めて定年までベストを尽くす者も少なくない。筆者はそうした一人である、40年同じ金融機関で米企業の資金調達・運用に精励し、じっと日米の金融市場を見つめ、かつガバナンスにも精通しているべテランのインベストメント・バンカーに、投資家・株主として昨今の米ビジネス界に於けるガバナンスに係わる基本的なチェック・ポイントを聞いてみた。さすがのベテランバンカーも暫く考えた末、彼は次の3点を指摘した。
  • 独立した社外取締役がキチンと選任されているか?
  • 社外取締役が業績評定を確実に行ない取締役に対する報酬委員会を実質的にコントロールしているか?
  • 社外取締役が質の高い監査委員会を組成して経営監視をしているか?
彼の言によれば、米国の「社外取締役」は従来取引関係にある金融機関、会計士、弁護士、コンサルタントなどが相互のビジネス推進のために就任していたが、最近では投資先企業の業績評価や監査を公平・無私に判断することが株主にとって必要であるとの声がカルパースなど公的年金基金を中心に大きくなり、利害関係がない社外取締役が次第に求められつつある。

上記のチェック・ポイントについては、従来から投資信託やヘッジ・ファンド等の機関投資家は時間とコストがかかることもあり「株主」としてチェックをしたがらなかったが、ここ数年来、年金基金、特に公的年金基金が受託者責任の一環として強い関心を示してきた。このウォール街の老練バンカ−は、ガバナンスの潮流を大きく動かしてきた代表は、アクテイビスト(活動的株主)としてのカルパースであると言い切っている。
3.ガバナンスと「カルパ−ス効果」
70年前に設立されたカルパースは、カリフォルニア州公務員退職法と歳入法などの規制に基づき退職金制度の公的機関として、1984年にガバナンスのコミットを開始した。具体的には、投資先企業が低迷していれば、1)EVA(経済付加価値)をチェックし、2)ガバナンスの実践状況を調べ、3)過去3ヵ年の株価の推移を同業他社や業界内各社と株価の比較を行う。こうした作業はまず問題先企業を50社選定し、更に検討を加えて最後に15社までに絞る。この中で運用利回りの観点(委託者利益)と受託者としての忠実義務から問題企業を公表し、ガバナンス上問題があればガバナンスを改善し、株主重視の経営をするように改善を求めてきた。カルパースは13年以上にわたり、こうした問題企業を多いときは10社、少ないときでも5社をリスト・アップし、これまで合計96社を公表してきた。この結果、カルパースがリスト発表前5年間の問題会社の株価は平均してS&P株価指数比96%であったものが、発表後5年間のこれらの株価は毎年平均して14%アップした。これは毎年約150百万ドル(約180億円)の運用プラスになっているという。カルパースはこのガバナンス活動を自ら「カルパース効果」として説明している。

カルパースは1992年から毎年日本の有力企業に対し、社外取締役制の導入、配当政策や役員退職慰労金の見直しを求め、1998年3月には「対日ガバナンスの原則」を公表するなど日本企業に「モノ申す」外国人株主として存在感を示すと同時に、ガバナンス面で強い影響を与えてきた。しかしながら、米企業に行っているような問題企業のリスト・アップと公表は現段階では行わないと言っている。たとえカルパースが日本において同様なことをしても、この「カルパース効果」が具体的にどれほど現れるかは日本企業特有のガバナンスをどこまでグロ−バル化できるかに懸っていると思われる。
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