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今年(2002年)の株主総会 −外国人株主の視点
(2002年09月16日)
資本市場のグローバル化の進行による環境の変化、欧米の株主重視とコーポレート・ガバナンスの潮流はわが国においても 株主議決権行使の面にも少なからぬ影響を及ぼし始めている。これは昔から頼りにして来た持合株主の減少により 「ナアー・ナアー主義」の株主が減少し、国際化した市場を意識した内外の投資効用選考型株主の比率が増加ししたため、 「株主重視」・「株主価値の増大」を一段と求める株主の株付けが目立って来たためである。

つまり、この株式保有構造の変化に伴って、「異なる意見をもつ」株主の保有比率が高まったため、持合株の「白紙委任状」 で議決し、時間通りに議事進行を済ませればよかった従来の株主総会から、外国人株主や年金、投資顧問など「モノ申す」 機関投資家のために、議決権行使を意識して、コーポレート・ガバナンスを視野に入れた総会に変貌することが求められる ようになったことを意味する。以下は日本の株主総会に係わる制度面、議決権、及びガバナンスなどに関する外国人株主の視点 からのレポ−トである。
1.株主総会の制度面からの指摘点
株主総会の運営について国際的なル−ルはないものの、株主総会の開催日、開催場所、議事内容などに係わる事項については、 コーポレート・ガバナンスの観点からも大きな議論の一つになっていた。特に日本の株主総会の運営に際し、外国人株主からは
(1)6月下旬に株主総会が集中しすぎること。
どこの国でも株主総会は集中する傾向がある。しかし日本の株主総会は6月末の集中日を避ける会社より、集中日に開催日に合わせる 企業が引き続き圧倒的に多い。これは出席者を少なくさせるためと思われても致し方ない。横並びの風習から脱して開催日を分散 させるか、思い切って土曜日や日曜日に開催するような工夫は出来ないものか。

(2)召集通知の発送日と総会の開催日が2週間と短いこと。
法的には召集通知書は株主総会日の2週間以前に発送することになっている。しかるに、株主総会白書によると、昨年6月実施の株主総会では 召集通知の原稿の印刷所への投入時期について、「前回と同じで変化なし」は回答会社の82.1%(前年比0.9ポイント増)と高い。 発行会社は召集通知書を株主宛に早めに発送せずギリギリまで時間をかけて書類を十分チェックするのが現状である。間違いを防ぐため 色々精査したい気持ちは理解できる。しかし一部の企業がすでに始めたように、海外の株主などを考慮してもう少し招集通知書を早めに 配布し、総会関連書類のチェックに時間をかけさせる工夫がほしい。

(3)召集通知が殆んど日本語であること。
外国人株主比率が増加している企業は英文化が行なわれている。同比率が少ない企業は召集通知書を英文にしない会社が多い。株式市場が国際化している現状を理解し、召集通知書の全文の英文化はともかく、Meeting Notice として少なくとも株主総会の開催日、場所、議案、重要事項などの部分だけでも英文化する工夫を是非お願いしたい。英文の記載がなければ外国人株主・投資家などが、日本の企業の株主総会の議案を時間をかけて十分検討できないとの批判が従来から多い。
2.「モノ申す株主」のチェック・ポイント
米国の議決権行使のアドバイス機関ISSは各国の法律や規則に基づいて、世界中の有力企業の議決権を調査・分析している。日本企業のチェックに際しては、問題とされている業種に属する企業、反社会的行為の企業、不祥事等でメディアにとりあげられている企業等を事前に新聞等で十分調査し、これらの「問題企業等」に時間をかけてじっくりと調査・分析して、その結果を顧客である海外の機関投資家にメ−ルでアドバイスしている。 アメリカの有力な機関投資家であるカルパース(加州退職年金基金)やクレフ(大学教職員退職金基金)もこうしたアドバイスに基づき独自の議決権行使のガイドラインを設定して、日本企業にモノ申しているのが現状である。
以下は外国人株主の視点からの日本企業に対する具体的なチェック・ポイントである。

(1)取締役の人数は適切か?
日本の多くの公開企業において、執行役員制度の導入後、取締役の人数の削減を中心に取締役会の改革が行われつつある。日本の企業は企業規模に比較して取締役人数は欧米の同規模の企業に比してまだまだ多すぎる。米国は7〜15人が多い。20人以上では議論しても結論がなかなか出ないし、形式的になりがちであるため、取締役の人数が多いところは一段と減らしたほうが効率がよいと言える。取締役会のあるべき姿は、社外取締役を含めた各取締役が資料を事前に十分チェックし、貴重な時間を割いて出席しているのであるから、重要な事項を真剣に討議する場であるべきである。重要な取締役会議であればある程、各取締役は自ら事前にしっかりと勉強し、検討を重ね、他の取締役と会議の場で十分な議論を重ねるべきである。その結果としてアイディアやクリエイティブな見方が出て、出席者全員が納得でき、「何かを生み出す」会議となるべきであろう。日本の取締役会の議事録を見ても定型化したものが多く、多面的な議論が十分行われたとは読みとれるケースは少ない。資質の優れた少数の取締役で緊張感のある取締役会を構成するシステムに変わるべきである。

(2)社外取締役は独立しているか?
取締役会の活性化や改革のために社外取締役の導入が求められている。日本では社外取締役がいたとしてもトップに対して株主価値増大や株主の立場から正論を述べる社外取締役はまず数少ないであろう。何故なら、日本企業の多くの社外取締役は関連(旧財閥系や銀行系列)グループから相互に派遣し合うか、株式の持ち合いに係わる取引上のメリット追求のために形式的に就任している事例が大半であるからである。大株主、メイン・バンク、取引先出身の取締役は外国人株主からは「独立」しているとは思えない。官庁出身者は「独立」と思われるがプラスとマイナスの両面がある。社会的には天下りとして非難されようが、ビジネスがスム−ズに遂行されれば株主としては「賛成」である。 外国人株主の視点から言えば、株主利益の立場から社外取締役として意見をキチンと主張できるのは独立した柵のない社外取締役である。しかしながら、日本企業においては関連企業や取引先からの社外取締役は見られても、米国で見られるような真の「独立社外取締役」は残念ながら殆んどみられないのが現状である。

(3)社外監査役は本当の「社外」か?
社外監査役は1993年の商法改正により、社外監査役就任が義務づけられた。実際に就任している社外監査役は系列関係や大口株主会社からの派遣で、本格的な「社外」とはいえない場合が多い。この事例は特に旧財閥系グループでが多く見られる。これは商法が求める監査役制度の精神に反しており、社外監査役としてのチェック機能を十分果たしているか疑問である。不祥事が跡を断たない昨今、議決権行使の観点からも、また、監査役の機能アップのためにも、キチンとした社外監査役が選任され、コーポレート・ガバナンスの実践のためにも「社外」という意味と機能をよく認識する必要がある。

(4)役員退職慰労金はフェアーか?
役員報酬は株主価値増大と会社の業績に直接リンクして支払われるべきもので、在籍中に与えられる報酬、賞与、ストックオプションの他に、退職慰労金や役員年金等を含めた総報酬のパッケージとしてチェックされなければならない。これらのパッケージの中身について日本企業は99%一般公開したがらず、また要求する「モノ申す」株主もいなかった。 しかし、日本と較べ高額な役員報酬に慣れている外国人株主が日本企業の役員報酬額について異を唱えているのは、退職慰労金を期待すると社内出身役員はキチンと発言しなくなる恐れがあることと、この計算根拠が不透明なためである。 役員の役員報酬と退職慰労金は企業戦略の一環でもあり、@経営者の報酬の目的と確認、A企業目標と報酬制度の合致、B業績指標と報酬との関連、C同業他社との比較、D報酬種類の組合せ等について定期的見直しを行うことは株主対策だけでなく、コーポレート・ガバナンスのと面からも重要である。

(5)取締役と執行役員は牽制しているか?
日本の商法(第260条)は取締役会において、「重要な業務執行の決定」を行うと同時に取締役会の構成員である各取締役に対して@重要な財産の処分及び譲受A多額の借財B支配人その他の重要なる使用人の選任及び解任を決定するよう求めている。従って各取締役の専決事項は、日常の営業取引等に係わる業務執行の内容を含めれば非常に多い。米国では、経営は執行部門と取締役会に分離し、株主が取締役を選任するチェック・アンド・バランスのとれた構図が好ましいと言われている。つまり、経営の実務・執行面は執行役員に任せ、取締役は人数を絞り大所・高所から執行体に指示をし、実質的な討議を取締役会で十分行なう。多忙極める取締役の業務執行を補佐し、業務執行の効率化をはかるためにも執行役員制を導入することは好ましい。なお、日本の上場企業において執行役員制度を導入している企業は1/3もないのが現状である。

(6)ストック・オプションは株主にもプラスか?
ストック・オプション制度を導入するメリットはストック・オプションを付与された経営陣や幹部社員が常に株価を意識して経営を行うようになり、結果として株主重視の経営戦略を行うこととなると同時に優秀な人材確保が可能となることである。 株主から見れば、このストック・オプションは原則として賛成であるが、「副作用」もあるため、その制度の内容をよく吟味する必要はある。 つまり@業績低迷にも拘わらずストック・オプションを含めた高額な報酬経営者報酬に対する社会的非難があること。Aストック・オプションの権利行使に伴う一株当りの利益の稀薄化があり得るため、行使価格と同額以上の利益が増額しない限り、大規模な自社株買いを実施して市場から株を吸い上げる必要があること。(いわゆる「隠れ債務」)B株価上昇の要因は必ずしもトップの経営手腕と100%直結せず、株式ブームに基づく要因もあり因果関係は判明しにくいこと。C権利行使に伴い社内株主(インサイダー)の比率が高まり、社外株主は情報上不利になる可能性があること。D議決権での投票比率が低下する恐れがあり得ること。 米国ではストック・オプション導入は社外取締役が決定するが、日本では取締役同士が付与するため問題は残る。ISSはストック・オプションは株価上昇がなければその効果が失われるため、企業のライフステージが「成熟期」や「衰弱期」の段階に入った企業には発行総株式の10%まで、「成長期」である、ハイテクやバイオ関連の新規ベンチャー型企業には同5%までを目途に導入することに賛成している。

(7)高齢者の取締役はマイナスでないか?
高齢者の中には経験豊富でアイディアもすばらしく、40才〜50才の若き経営陣にとっては多くを学ぶべき博学の人生の先輩もいる。一般的に功なり名を遂げたと思われる60才〜70才の取締役は成功体験に縛られたエスタブリッシュメントで進取の精神に欠ける面があることは否めない。加えて取締役会の出席者に高齢者が多いと、総じて分別のある議論を求めて「安全に」「多過なく」「先例に慣って」結論を出しがちであり、自己否定はしたがらない。 産業革命に匹敵するといわれている「IT革命」の時代に即した新しい事業展開やシステムに対応するのには、高齢者が多い取締役会では説明に手間がかかるだけでなく、将来に対するシステムの展開や布石の決断に時間がかかり、結論を導くのが難しくなる場合があり得る。ITと国際共通語である英語が理解出来ない取締役はこれからの取締役会に参加しても機能的に期待出来にくい面が多いといえよう。理想的には激職の経営トップには40代の若手を起用し、経験豊富な高齢の取締役は自ら進んでアドバイザー役になることが、取締役会の活性化、人材育成、成長維持のためにも必要と思われる。米国の一部の機関投資家は高齢者の年齢制限を72歳を目途としているが、ISSは日本においてこの件で特別な見解は示していない。

(8)ROEの改善策は?
多くの株主・投資家は収益性を判断するためにROE(自己資本利益率)に強い関心がある。つまり、株主は資金を他の債券や預貯金に投資すれば、確定した利回りで運用できるはずである。それをせずに当該企業に株主の資金を投資しているため、投資先企業がどのくらい利益を上げたかを投資判断としてチェックする。従って、特に投資効用選好型の株主はこのROEが同業他社と比較して劣っていれば利益処分案で具体的にその改善策について説明を求める場合がある。

(9)配当性向はまずまずか?
企業側の内部事情にもよるが、一般的に利益が十分計上されていながら配当性向が15%以下であれば、その企業の成長段階、直近の利益動向、前年の配当実態、自社株の買入れ、利益・剰余金のレベル、将来の資金増強の必要性などを厳しくチェックする。利益剰余金が十分で、その期の未処分利益剰余金も十分あるならば、株主への還元の一環として配当を増やし配当性向を高めるべきという考えが強い。なお、ISSは昨年6月、日本の企業4社に対し配当性向が低いとして利益処分案に反対するようアドバイスを行なった。

(10)自己株式取得の可能性?
自己資本比率をどう保つかは経営者にとって微妙な問題であるが、自己資本が高く当期利益もまずまずで利益剰余金が十分であり、他に大きな投資計画がなければ、一株当たりの配当効率を向上させるためにも、自己株式の取得は行ってほしいとの株主の要求は強い。キャシュが多い会社で、特別な事業計画がなければROEを引き上げるためにも自己株を取得するのは問題はないが、浮動株の多い企業にとっては10%以上の買入れは流動性の観点から慎重に行なうべきと言えよう。これは日本の企業は33.4%で企業の支配株主が発生するする恐れがあるためである。いずれにしても外国人株主としては自己株を2〜3%取得することは賛成である。
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