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日米に見る議決権争奪戦
(2002年09月16日)
村上ファンドは日本に初めてと言われるプロキシー・ファイト(議決権行使書争奪戦)を東京スタイル社に対して行い、結果的に株主提案は 否決されたがその帰趨は内外の市場関係者から注目された。この戦いを、昨年8月に米国で見られた米ソフト業界第4位のコンピューター・ アソシエイト社(以下CAという)とその株主との経営陣退任要求の戦いと、また今年の1月〜3月にみられたヒューレット・パッカード社 (以下HP社という)のコンパック社との合併議案に係わる激しい攻防戦とを比較して、日米の株主権行使のあり方と株主の対応について チェックしてみよう。
1.青い目が見た本邦初のプロキシー・ファイト
米国の議決権行使のアドバイザ−機関であるインステイチューショナル・シェアホールダー・サービシーズ (以下ISSという)は、プロキシー・ファイトに関して顧客の機関投資家・株主に対して株主提案をどう評価して如何に議決権を行使すべきかを 的確に助言することで国際的に定評がある。今年3月HP社の議決権行使に係わるアドバイスを発表するに際して、ISSは会社側と株主側双方に対し 20回以上のインタビューを重ね、結果的に顧客である機関投資家(HP社の全体の26%を保有)に対して「会社側の説明は株主利益に適っている ため会社側に賛成」とのアドバイスをした。

ISSは東京スタイル社の株式を保有している欧米の機関投資家約30社にたいして、本件争奪戦の内容を慎重に分析・検討した結果、「村上フアンドの 提案は株主の利益」と判断し、株主提案に賛成との助言を行った。
2.米国は株主提案がシンプル
村上ファンドは東京スタイル社に対し、@500億円を限度に自社株の買入、A増配500円、B社外取締役を2名選任、との3点をガバナンスの観点から 一挙に提案した。
米CA社のケースでは株主側は「経営陣3人の退任と新しい社外取締役3人の選任」のみを提案した。一方、HP社の論争点は「コンパック社との合併是否」の一点であった。米企業2社のケースでは論点はいずれも絞り込み、問題点を解り易くキャンペ−ンした。
村上ファンドとしても、まず焦点を剰余金の使途に限定するか、または社外取締役2名の選任のいずれかに絞り、株主の理解を得やすいシンプルな提案にしていれば展開は異なっていたかも知れない。
3.長すぎた戦いの期間
村上ファンドは1月から会社宛のレタ−作戦で本格的な「戦い」を開始、結果が判明する5月末までホットな神経戦を約1年にわたって展開した。米CA社は7月〜8月にキャンペ−ンを集中させ短期間で勝負した。また、HP社も議決権行使書の勧誘キャンペーンは1月〜3月に集中的に行い、社内の大半のエネルギーを本来の合併事業推進に注入させる余裕があった。村上ファンドは他の多くの投資先企業十数社のフォローを犠牲にしてまで大半のエネルギーと長い時間をこの案件に費やした。
4.コストとメディア利用
米CA社やHP社は株主とのコミュニケーションの手段として機関投資家や個人投資家を狙ってコストを度外視したと思わせるほど、紙媒体やTVを中心に大キャンペーンを展開した。CA社は7〜8月中で新聞・TVなどに10百万ドル(約13億円)以上を、HP社は1〜3月を中心にキャンペーン代に合計125百万ドル(約162億円)をかけたという。村上ファンドは資金に制限があるためか、そのキャンペーンはメディアにプレス・リリースを配布するか,記者会見でガバナンスの観点から株主提案の理解を得ようとした。つまりメディアを利用した割安キャンペーンの感があった。


プロキシー・ファイトはヒト・モノ・カネ・時間がかかるだけでなく、その展開には優れた戦略・戦術が求められる。当事者にとっては「喉元を切る戦い」でもある。日本において村上ファンドに次ぐアクティブ(活動的)な株主が次々に登場するとは当面思われない。株主重視、株主価値に係わるガバナンスの認識が具体的になかった日本で、村上ファンドはこれらの認識を高めることに大いに貢献したと言えよう。
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