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2002年6月の株主総会について
1.概要
会社の組織・業態の事項、役員の選任・解任の事項、株主の利益名等の事項について決議する株主総会は企業の意思決定の最高機関で、 決算期ごとに開催される定時株主総会と必要に応じて開催される臨時株主総会がある。2002年6月の定時株主総会は従来見られなかった 大きな課題を抱えて行われた。つまり、
  • 平成13年に行われた一連の商法改正への対応
  • 内外の機関投資家による「議決権行使」への対応
  • 経営不振・不祥事に係わる企業不信の払拭への対応
  • 株主総会の電子化への対応
などである。以下はマスコミ報道で伝えられた事項などを分析し、まとめたものである。

  • まず、3月決算の上場会社ベースで2,047社の今年の株主総会のピークは6月27日であった。東京証券取引所上場企業で見ると、その集中率は 昨年比3.0ポイント減の76.5%となり若干の分散化が進展したと言えよう。一部の企業で総会日を土曜日にし、開催時刻を定番の午前10時以外 として、株主懇談会とセットにするなどの働きも目立った。
  • 商法改正に伴い、今総会の付議議案は、商法改正対応関連の事項が多かった。定款変更議案として、単元・金庫株制度関連や取締役・社外 取締役・監査役の責任に係わる規定新設、監査役の任期延長等をはじめ、法定準備金の減少、自己株式取得、ストックオプション(新株予約権の付与) など様々であった。加えて、社外取締役の選任や取締役の任期を2年から1年に短縮(定款変更)するほか、商法執行規則に対応した記載など、各社 それぞれの対応が見られた。
  • ここ数年の傾向として企業の安定株主構造は、銀行・事業会社の持合い解消により、いわゆる安定株主比率が低下し、株主の「機関化」が 一層進展してきた。「モノ申す株主」に転じた国内機関投資家(特に投資顧問と信託銀行)が、それぞれの議決権行使基準に従い、積極的に議案を 精査の上、従来以上に反対・棄権投票を行う傾向が強まった。特に役員退職慰労金、利益処分案、監査役の選任などに反対票を投じた。公的年金が 運用機関にたいして効果的な議決権行使を行うよう働きかけを強めているため、機関投資家の議決権行使の関心は注目された。なお「個人株主」も 昨年比136万人プラスとなり増加傾向が続いている。この結果、発言する株主が増加し、所要時間も1時間から2時間かかった企業が多くなった
  • 今年の総会の最大の特徴は、ITを用いた開かれた総会が見られるようになったことであった。これはインターネット利用により、決算情報の開示、和英の召集通知状のホームページへの掲載、モニター画像によるマスコミへの公開、総会の第三者への中継、などさまざまな展開が見られた。議決権行使の電子化(約60社)と招集通知の電子化(3社)は全体的には少なかったが、来年の株主総会は、会社関係書類の電子化ともに、この株主総会の電子化は多くの企業が取り組むと思われので、引き続き大きなトピックスになる可能性が強い
  • 総会屋まがいの発言は別として、企業の業績の向上を求める声や企業の透明性を求める声が増えた。不祥事など問題があった企業の株主総会場では、経営トップが経営不振・不祥事に直面した経偉を述べたり、株主に陳謝する場面や、生き残りをかけての改革を強調するなど、自らの声で積極的に経営政策などを語り株主に理解を求める姿が目立った。一方、一般株主も多数の会社でこれらに関して活発な発言を行った。このため企業側の対応では、「退職慰労金」「役員報酬」の金額開示の取扱いにも変化が見られ、営業報告書に役員報酬総額を記載する例や役員退職慰労金議案に総額を記載する例が見られた。一方、株主からの質問に応じて役員報酬総額を開示したり、最高額、平均額を開示するほか、役員退職慰労金の支払総額あるいは計算上の上限金額を開示した例も見られた。
  • 従来マスコミが大きく報じている総会関連についてはあまり特筆すべき事柄はなかった。総会運営をより「株主重視型」に変革する中で、運営方法そのものに特徴を出す企業が多く見られるようになった。つまり、社員株主の役割を極力縮小し、株主に質問し易い雰囲気をつくるとともに、質問に対しては丁寧に対応するといった従前からの動きに加え、営業報告をビジュアル化する企業の増加、株主以外の人への参加呼びかけや、自社の特色を最大限生かしたイベント化した株主懇談会の開催などが次第に多くなって来た。
なお、召集通知状の早期発送とその効果は古くて新しい課題であるが各社各様に様々な工夫をこらしている。

日本企業の株主総会はかつて株主の持合先から白紙委任状を取り付け、実質的な議論がなされないまま議案が賛成多数で議決される「シャンシャン総会」が多く見られた。しかし、株式の持合解消が進み、外国人株主や年金資金が大株主となって独自判断で議決権を行使する例が増えてきた。 今後の株主総会は、不祥事防止などのリスクマネージメント、電子化対策、ガバナンスや議決権行使への対応などに加えて、幅広い視野におけるIRの運営が一段と求められると言えよう。
2.2002年6月の株主総会のトピックス
(1)話題になった主な企業
  • 雪印乳業:(経営再建中で、全役員の退陣と98%の減資を承認)
  • 雪印食品:(牛肉偽装の発覚で解散後、債務超過216億円を承認)
  • みずほホールデイング:(システム障害の責任で経営陣の退任要求があったが2時間で終了)
  • UFJホールデイング:(赤字決算でも退職慰労金を約10億円を支払うことを開示)
  • 日本ドレーク・ビ−ム・モリソン:(創業者と社長が互いに退任を要求、議決権獲得合戦で混乱)
  • 東京スタイル( 議決権工作により村上ファンド側の厳しい株主提案を全て否決した)
  • ダスキン:(無認可添加物の混入問題で社長が謝罪、約3時間で終了)
  • 阪急電鉄:(社長宅への銃襲撃や系列企業への傷害事件のため警察の警護下で開催)
  • 松下電器:(4310億円の上場以来初の大幅赤字に社長が陳謝)
  • NTT:(2兆790億円の特別損失で過去最大の赤字となり、質問多数)
  • 佐世保重工:(国の助成金の不正受給により詐欺容疑で捜査中だが30分で終了)
  • 三井物産:(出席者150人に「鈴木宗男疑惑で不正な働きかけはない」と言明。)
  • 日本工営:(ムネオハウスの不正入札で社員が逮捕・起訴された件で社長が陳謝)
  • 日揮:(国後島の工事受注疑惑でコンプライアンスを徹底したいと回答、30分で終了)
  • スタ−ゼン:(食肉の偽装表示が発覚、社長が企業倫理と再発防止を表明、謝罪)
  • 三菱電機:(1436億円の大幅赤字の経営責任で役員報酬の大幅カットを表明)
  • 日本航空:(筆頭株主の糸山英太郎がエグゼブティブ・アドバイザーに就任)
  • 日石三菱:(退任役員4人の退職慰労金の合計額を開示したが、株主から質問なし)
  • いすゞ自動車:(経営再建遅延のため、役員退職慰労金の支払いを来春に延期)
  • トヨタ自動車:(出席者745人で最高の参加者。時間は1時間44分と長かった)
  • JR東日本:(1500人が参加、労使関係や安全問題で19人が質問3時間50分かかった)
  • その他日立、東芝、凸版など(インタ−ネットを利用して議決権行使や電子広告を行った)
(2)インターネットによる召集通知と議決権行使
平成14年4月1日の商法改正により、インターネットによる召集通知や議決権行使が可能になり、株主にとって出席、書面、WEBと株主総会へのアクセス機会が増え、利便性が向上した。しかし、2002年6月の総会では商法改正して日が浅く、準備期間も短かったためか、「様子見」の企業が多かったといえよう。

(3)モノ申す株主の多様化
5月総会の東京スタイルでは、大株主である投資ファンド、M&Aコンサルティングと経営陣の配当政策等に関する意見対立から株主提案権が行使され、わが国では前代未聞の委任状獲得合戦に至り、総会当日の採決で議決権集計に時間を要し、6時間を超えるロングラン総会となった。 こうした対立は6月総会でも見られ、創業者と社長が互いの退任を求めて争うかたちとなった日本ドレーク・ビーム・モリンの株主総会は経営陣が僅差で勝利した。

不祥事の再発防止をめぐって株主オンブズマンが社外取締役の導入を求める株主提案権を行使した雪印乳業では、会社自らが消費者団体出身の社外取締役候補者を提案したため株主提案権が取り下げられた。株主オンブズマンは、ソニーや三井住友銀行に対しても役員の個別報酬開示等を求める株主提案を行い、ソニーでは27%を上回る賛成票を提案するなどの成果をあげたとしており、来年以降も株主提案権の行使を継続する模様である。 また、機関投資家の議決権行使についても、従来のような会社側に白紙委任する姿勢はみられず、問題企業をスクリーニングして個別の議案に対する賛否を吟味する動きが加速している。

(4)その他のトピックス
実際に、上場企業約2,100社の株主を保有する日本生命保険は、約10社の株主総会で会社側提案の議案に反対したようである。 一方、外国人機関投資家は、1,000社を超える議案に対して反対票を投じたようであるが、これは機関投資家向けに議決権行使の助言を行うアメリカの投資サービス会社であるISSの分析に従ったものと見られる。

・株主サービス
株主総会に付加価値をつけて、株主の関心を集めようと工夫する会社も増えている。総会後に株主限定ライブを開催するエイペックや最新ゲーム機を体験できる懇親会を実施するナムコなどは従来から関心を集めていたところであるが、本年は、ホリプロが株主総会後に所属タレントが参加する懇談会を開催し、大きな話題を提供した。自社製品の展示や経営報告会、立食パーティー等を含めると、株主総会以外の付加価値を提供している会社は少なくない。 また、来場株主に対して自社製品等をお土産に手渡す会社も多い。ソニーが従来の電池セットから携帯型ラジオに変えたことも、株主サービスの充実として好感されているようである。

・定足数
店頭登録のジャパンオークションシステムでは、特別決議の議案の審議に必要な定足数を確保できず、商法改正に伴う定款変更を株主総会で決議できない事態が生じた。 このため同社は、平成13年10月1日施行の商法改正による定款変更のみなし規定がある条項等につき、定款を変更した旨を公表した。 特別決議の定足数について、総株主の議決権の過半数から総株主の議決権の3分に1まで引き下げることを認める改正商法が、来年4月1日施行に決まったところでもあり、やや皮肉な結果である。 なお、特別決議の定足数引下げは、定款にその旨定めることが必要であり、当該変更にかかる定款変更議案については従来どおり総株主の議決権の過半数を要することになる。
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