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議決権行使は10百万ドルで買収 −NYSE上場のCA社−
(2002年12月23日)
5.コーポレート・ガバナンスとは何か?
ニューヨーク証券取引所に上場されている企業に対する「株主提案」が株主総会で提案されることもなく、また株主によって採決されることもなく、事前に「闇の中で」現金で取引されるというこの事実は、日本では「利益供与」である。日本の総会屋の事例とは異なろうが、アメリカのコーポレート・ガバナンスの実態に係わるケース・スタディーにユニークな題材を提供したといえる。

2002年8月に行われた定時株主総会で、CAのクマー社長は@業況が順調に推移していることと、A憶測された一連の会計疑惑は問題がないことが証明されたことを述べた後、CAのコーポレート・ガバナンス関連について以下の点を説明した。
  • 取締役会に各種委員会を設置
  • 初の独立社外取締役としてラニエール氏を選任
  • 社外取締役の任期を設定
  • ストックオプションを経費計上
総会では、CA側推薦の11名全員の取締役が予定通り選任されたが、ワイリー氏側の動きについては、一切コメントはされなかった。(2002年8月28日付プレス・リリース)

しかし、1ヶ月後の9月24日クマー社長は機関投資家に対する説明義務を果たすために、ICC(全米機関投資家協議会)の定期総会に出席し、ゲスト・スピーカーとしてCAの改善されたガバナンス状況について、縷縷説明した。ICCは、カルパースをはじめとした大手の年金基金がガバナンスや株主の権利に係わる課題や問題点を認識するため、全米の機関投資家に呼びかけて1985年に設立されたもので、米国のコーポレト・ガバナンス推進の一つの大きなエンジンとして位置付けられている。このため、今回のCAの示談取引に係わる一連の動きは内外の機関投資家に説明し、理解してもらう絶好の機会でもあった。 スピーチの中でクマー社長は、敵対的株主提案をしたワイル氏との「現金取引」に至ったことついて、
  • 前回(2001年8月総会)と同様のヒト・モノ・カネのかかる議決権行使の争奪戦を行うより、現金1000万ドルを支払うことになり、そのエネルギー、コスト、時間を削減し経営に前向きに取り組める。
  • この支払内容がいろいろ言われ、関係者から非難されていることは充々承知している。取締役会としても苦汗の決断でもあった。
  • 前回のプロキー・ファイトで、CAもワイリー氏側も支払ったコストは各々1000万ドル以上で今回も同様の戦いを行えば、前回以上の費用と社内混乱が生じる可能性があった。
  • 戦うのでなく、示談を行うという決断は単純な決断ではなかった。あらゆる面から慎重に考慮して行った。CAにとっても、CAの株主にとっても正しい判断であったし、「もとは取れている。」
株主提案を総会の議題として採択せず、「現金」で解決するのは、どこかの国で昔見られた対総会屋の手法である。本件はアメリカの商法でどこまで利益供与として追及されるのかはっきりしないが、弁護士をも入れて各面から熟慮した結論と思われるため株主からの法的手段が講じられても大丈夫のようになっていると推測される。

いづれにせよ、CAはコーポレート・ガバナンスの「ゴールド・スタンダード」を設定中という。洋の東西を問わず、オーナー企業のコーポレート・ガバナンスは論じにくい点が多い。上海生まれで共産主義の影響を少なからず受けて育ったウォン氏が「株主資本主義」をNYSE上場企業のトップとしてどこまで理解していたのか。なかなか社外取締役の選任をせず、外部の者に耳を傾けたがらない「オーナー病」に冒されていたかもしれない創業者のウォン氏の突然の辞任の背景は外から見えないところで進行していたと言えよう。
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