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議決権行使は10百万ドルで買収 −NYSE上場のCA社−
(2002年12月23日)
1.創業者の突然の辞任
米大手ソフトウェア会社のコンピューター・アソシエイツ・インターナショナル社(以下CAという)は、2001年8月の 定時株主総会でチャールズ・ウォン会長ら取締役10人全員を会社提案通り再任した。
この株主総会は、CAに買収された会社の旧経営陣との議決権行使に係わる経営権闘争となり、両陣営が議決権行使書の 回収のために、ウォールストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムスなどの全国紙の一面広告費用などに各々10百万ドル (約12億円)以上支払ったことで全米のビジネス界、マスコミの注目を集めた。

この激しいプロキシー・ファイトで辛勝したCA創業者のウォン会長は2002年11月18日突然辞任し、取締役からも退いた。 ウォン氏は、1952年、中国から家族とともに渡米、1976年にCAを設立し、艱難辛苦の末、1986年NYSEに上場させ、今や ソフトウェア業界の5指に入るまでの国際的企業に発展させたドラゴン(中国系)のサクセス・ストーリーの主役の一人でも あった。また、マイクロソフト(ビル・ゲイツ)、オラクル(ラリー・エリソン)、インテル(アレディー・グローブ)らとともに ソフトウェアCAのウォン氏はITベンチャーの大物創業者リストのトップにランクされ、100カ国余でソフトウェア関連の事業を 陣頭指揮してきた。ビル・ゲイツらはオーナー企業でありながら、オーナー企業が陥りがちな「オーナー病症候群」にならず、 IT革命に大いなる夢を描き続けているのに、ウォン氏が58歳の若さで創業した事業から「突然辞任」した背景は何であったのか?
2.議決権行使争奪の第一ラウンド
CAは2000年に39億ドルで買収した旧スターリング・ソフトウェア社のサム・ワイリー元会長から、2001年8月のCAの株主総会で、
  • 株価下落の経営責任
  • ウォン会長の法外な高額報酬の引き下げ
  • ウォン会長とその一派の「イエス・マン」役員の退任
などを求められた。

この株主提案には地元のニューヨーク州の公的年金や、投資信託(フィディリティーインベストメント)、銀行(バークレー・バンク)は反対したが、カルパースは「株主のためになる」として賛成した。

結果的には、CAの会社提案がすべて可決されたものの、ウォン会長主導のCAコーポレート・ガバナンスの実態についてかなりの批判票が集められたことも判明した。このため、再任された経営陣は株主価値向上のために、情報開示を積極的に行うなどガバナンスの根本的な見直しを余儀なくされた。
3.争奪戦の第2ラウンド
年初に38ドルつけたCAの株価も2月には16ドルと低迷。CAの8月の定時株主総会が近づいた。召集通知の準備に入った6月末に、CAは前回と同様な議決権の争奪戦を企てるといわれているワイリー氏の動きを封じるための先制攻撃の一環として、以下のプレス・リリースを行った。それは、
  • 20%保有する大株主のヘフナー氏が4月25日付の書簡でCAの現経営方針を前面的に支持していること。
  • 会社側が表明した事業計画は予定通り順調に執行されていること。
  • 独立社外取締役を選任し、コーポレート・ガバナンスも改善中であること。
  • 株主価値向上のために他に類のない「ガバナンス原則」も採択したこと。
これに対して、ワイリー氏側は、今年の株主総会でもウォン会長をはじめ、クマール社長らトップ経営陣5人の退任を求める意向であることと、メディアに6月21日報じさせた。ワイリー氏側が社外取締役として具体的に推薦しているとして名が報じられたのは、ダラス連邦準備銀行の前会長、有名な航空会社の前役員、有力レンタカーの社長などの名士ら5人であった。

一方、CAの経理処理をめぐって、粉飾疑惑があるとしてSECや司法省の検査が入ったこともあり、アナリストや格付機関のCAを見る目も厳しくなり、一部の市場関係者からは経営陣の交代を支持する動きも広がろうとしていた。つまり、前年に見たれたように、機関投資家や個人一般株主を巻き込んだコストのかかるプロキシー・ファイトの第2ラウンドが7月〜8月に始まろうとしていた。
4.議決権行使は10百万ドルで買収
第2ラウンドは、静かに進行しているかに見えたが、ワイリー氏側は、前回の票集めの経験から@CAの大株主のスイスの大富豪ウォルター・へフナーの意向が読めないこと、Aキャンペーンの工作費用に前回同様10百万ドル以上かかることなどから、CAに対するプロキシー・ファイトをテマ・ヒマかけて戦い抜くより、コストをかけずに「名」を捨てて、「実」を取る示談取引に転じた。
つまり、株主提案が具体化した1ヶ月後の7月24日、ワイリー氏側は敵対的な今回の株主提案を撤回し、今後5年間同様な提案は行わないことを条件にCAから10百万ドルの現金を受領した。この示談はどちらの陣営が、どうアプローチし、どういう経緯で金額が決定されたのか、詳細は藪の中であった。当然のことながら、この取引成立のニュースは、株主、市場関係者やコーポレート・ガバナンスに関心のある関係者には強いショックを与えた。CAの経営陣とワイリー氏側が対立してきた経営上の論点をどのように整理して、双方が同意したかについてCA側から一切コメントはなく、会社側がプレス・リリースしたのは、
  • ワイリー氏側が5人の取締役候補者を取り上げることに合意した。
  • 新たな社外取締役をコーポレート・ガバナンス原則に基づいて追って選任をする。
ということだけであった。このため、CAの経営の透明性、説明責任、情報開示などガバナンスのイロハが行われず、不満を抱く株主・投資家が多かった。議決権行使のアドバイザー機関のISSの担当者もこの発表には驚愕し、「CAのコーポレート・ガバナンスはどうなっているのか。ウォン会長の引責辞任の圧力は次第に高まろう」と7月に予測した。また、欧州の一部の機関投資家も株主提案の買収の事実を10百万ドルという金額が問題ではなく、カネでケリをつけた解決方法が問題であると非難した。
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