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「モノ申す」株主の光と影 −情報公開でカルパ−ス訴えられる−
(2004年10月05日)
1.はじめに
1984年カルパースは当時の資源エネルギ−の大手テキサコの身勝手な企業活動にチェックを入れるべく コーポレート・ガバナンスの概念をはじめて導入した。以後、カルパ−スが中心になって全米機関投資家協議会 (CII)が設立され、以来20年に亘り北米の企業を中心にその実践を求めてきた。また、受託資産の増大に伴い、 国際分散投資を進めるにあたっては、アジア・欧州の投資先企業に対しても当該国の事情にあった コーポレート・ガバナンス原則を求めてきた。特に米国内では受託者責任の一環としてコーポレート・ガバナンスを 主張し、株主として経営トップに@説明責任、A経営の透明性、B情報の公開などをコミュニケーションを通じて 働きかけ、これ等が主たる要因で株価低迷している問題ある企業は「ダメ企業」として公表してきた。日本にも1992年 以降、取締役や監査役の選任、配当政策、退職慰労金などについて具体的な株主活動をし、1998年には対日 コーポレート・ガバナンスの原則を公表して、わが国の経営者や機関投資家にも経営監視に係わる影響を少なからず 与えてきた。「モノ申す」株主としてその存在感は他に類を見ないほどよく知られている。
2.情報公開の不備で告訴される
2002年10月16日、カルパースは自らの年金資産の運用実績について受益者(カリフォルニア州の公務員)に対して 一部の情報を公開をしていないとして告訴された。訴えたのはシリコン・バレ−のサンノゼ市に本社を置く有力地方 新聞社「サンノゼ・マーキュリー・ニュース」(以下MNという)。MNが発表した訴状の内容は、
  • カルパースは従来、同基金の運用資産の全ての内容と運用利回りを公表してきたが、2001年4月以降は運用資産の一部であるプライベート・インベストメント(未公開株式)について運用実績などの情報公表を行っていない。
  • 具体的には、カルパースは近時ベンチャー・キャピタル、企業買収ファンド、不動産投資などの投資に比重を高めてきた。ITバブル崩壊に伴いカルパースの運用する退職年金基金の運用がここ1〜2年多大な打撃を受け、その運用利回りが相当悪化したと思われるが、この件について情報を公開しなくなった。
  • 基金内の都合により、運用実績を公表しないのは「公的記録法」(Public Record Act)違反である。
これに対して、カルパース側は、
  • 不振に陥っているプライベート・インベストメント関連の運用実績を公表することについての一般的ル−ルは確立していない。公開すれば資金を受け入れた事業体や投資運用担当者を困惑させるだけでなく、今後の年金基金の運用業務にも支障が生じ得ること。
  • もともとベンチャー関連や企業買収ファンドなどの投資は長期的観点から投資するもので、初期段階ではマイナス運用もよくあり得る。初期段階のマイナスの運用実績を他の公開株や公社債のように公表することは年金受益者を失望させ、困惑させかねない。
  • 従って、この種のネガテイブな情報を公表することは誤解を招きかねないので慎重に行いたい。
3.告訴の背景
カルパ−スが告訴される前に同様な動きがテキサス州の公的年金などで見られた。 すなわち、テキサス州の大学基金は149本の未公開株関連の投資を行ってきたが、州政府とマスコミの強い要請に基づきその運用実態の公開に2002年12月踏み切った。このテキサス大学基金は1995年に統合設立された総運用資産140億ドルの大手年金基金である。このテキサスの「情報公開」の動きはその後マサチュセッツ州の公的年金やカルフォルニア大学基金などの各公的年金にも同様の動きを早めさせる結果となった。MN紙の動きもこのテキサスこの新しい動きの影響を受けたものと推測される。 言うまでもなく、何時の時代でも、どこの国においても、ベンチャー事業の成功率は低い。まして、企業買収後のIPOには時間がかかるものであると同時に、これらの事業の性格上「対外厳秘」の契約も多い。このため投資資金の中身を公開したり、資金回収の将来性について説明責任を求めることは、これらを運用する一部のファンド・マネージャーにとっては耐え難い場合もあると言えよう。
現にカルパースは2002年10月の時点で総運用資産1326億ドルのうち、約69億ドル(全体の約5.2%)が指摘されたオルタナテイブ(代替)投資案件に向けていた。この中にはパートナーシップ形式での投融資、単独または共同による融資、SPC(特別目的会社)経由のベンチャー投資など様々な投資案件が190件も含まれていた。これらの中には日本の機関投資家にもよく知られているソロス、ブラック・ストーン、アーカンタイル、ブラウン・ブラザーズ・アンド・ハリマンなど多数見られる。この種の投資は1990年に4件実施したのをはじめ、1996年には72件に達し、回収分も含めて平均利回り(IRRベース)は10%〜15%と好調であった。しかし、97年から98年にかけて実行した案件は平均利回りが1%〜7%に大幅ダウンし、98年以降の82件、金額97億ドルは平均してマイナスとなっている。

告訴されて1ヵ月後、カリフォルニア州のサンフランシスコ最高裁は、「個々のベンチャーや企業買収ファンド等の未公開株関連の投資データは業務上守秘義務があり、公開できないということは理解できるが、「財務内容の情報公開」までもが公表できないという合理的理由を3週間以内に証明しないのであれば、個々の運用成果については公表せよ。」とカルパースに命じた。
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