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シュワルツエネッガーとカルパース
(2004年10月05日)
1.カリフォルニア州のリコール戦
GDPの規模でみると世界第6位にランクされるといわれるカリフォルニア州が政治危機に直面している。 任期があと3年残されているグレイ・デイビス知事(民主党)が、382億ドルの巨額財政赤字、8.4% という全米最高の失業率、電力危機時に行った高額買電契約のツケなどでリコールを起こされ、この10月7日 に罷免選挙と後任知事投票が同時に行われる。与党にあたる民主党は、ITバブル崩壊に伴う大幅な税収減で 教育や医療面で不都合が生じていることは認めたものの、その主な原因は「不況」で他にも46州が同様な 問題を抱えているとして「リコール反対」をアピールしている。もし、デイビス現知事が信任されなかった 場合は副知事のブスタマンテ氏を後任知事にしたいとして選挙運動を展開している。

一方、野党の共和党は映画俳優のシュワルツエネッガー氏を立てて、5年前に敗れた知事の座の奪回を 狙っている。

カリフォルニア州は人口3,500万人で全米の12%、大統領選挙の際の選挙人では55人を有して全体(538人)の 10%をしめる。米大統領選では州の一位に選ばれた候補が全ての選挙人を獲得するシステムのため、大選挙区 であるカリフォルニア州の趨勢は民主・共和両党にとって西海岸の問題だけでなく、連邦ベースでも政治的に 大きな意味があるとして内外で注目されている。
2.現知事とカルパース
今回の選挙は結果次第ではカルパース(加州公務員退職年金基金)にとっても少なからぬ影響を与えることになる。同年金基金の理事会は基金内出身者が6名、外部からの州知事任命者3名、州行政機関出身者4名、計13名で構成されている。過半数を占める外部理事には選挙で選ばれる州財務官や州監査官も含まれている。当然のことながら、全ての重要な投資案件は投資委員会で決定後この理事会で決議にかけられる。問題はデイビス知事や官選理事に政治献金などで親密な関係にある特定グループや労働組合に対して、優先的にカルパースの年金資金の投資案件が割り当てられたと思われる事実が昨年一部の有力経済誌が報道したことである(2002年6月24日付、ビジネス・ウイーク)。 具体的には、
  • デイビス氏に大口献金をして来たファンド・マネジャーのロナルド・バークル氏が運用管理する案件に760百万ドルの投資を決定。
  • 一人当たり2,500ドルの献金パーティーの音頭をとった、ぶどう園の共同所有者リチャード・ウオラック氏には「ぶどう園投資」の一環としてカルパースの資金を100百万ドルを投資。
  • 労組から43万ドルの献金を受けた官選理事のフィリップ・アンジェリデス氏は組合活動が適正に評価できる「新興国」に対してカルパースの対外投資を積極的に進めた。
確認はできないが、これらの投資案件は理事会の正式な機関決定を経て実行されたものであろうと思われる。また、受託者責任の観点から受託資産の投資を慎重に行うなら、分散投資が一般的である。同一州内に投資する比重は他の州では4〜5%が多いと言われている。しかし、カルパースは不動産、ベンチャーやバイオ事業、私募債投資、代替投資などに対して全運用資産の13%がカリフォルニア州内に偏っている。 デイビス知事は2003年初の年頭教書で、低迷している地元カリフォルニア州内の経済を活性化させ、また雇用創出のために州内の住宅建設や不動産開発のためにカルパースの資金を利用したいと言明していた。
3.民主党 VS 共和党
民主党は1930年代以降、低所得者、労働組合、有色人種、婦人層やリベラル派から幅広く支持され、社会問題や社会福祉の解決に注力してきた。一方、共和党は伝統的に保護関税、産業振興などを唱え、石油・国防産業をはじめとする基幹産業や金融業界の支持を得て強いアメリカを政策の柱としてきた。しかし、今日、両党のホームページを見る限り政策的に大差は見られないし、今回の知事選も政策面での論点ははっきりしない。(言論の)自由を標榜する国とはいえ、政権維持のための広告と選挙キャンペーンに係わる両党間の誹謗・中傷の表現ぶりは日本では見られないほど激しいし、政治献金の問いかけも大変熱心である。政党の推薦があろうがなかろうが、8月に届出を締め切った段階で立候補届出者は158人で、原子力技術者からポルノ俳優まで、22歳から100歳まで多種多様。乱戦模様のため、地元紙(LAタイムス)の8月末の世論調査では、選挙の結果については予断を許さない状況であるという。煎じ詰めれば、祖父の時代にメキシコから移民したヒスパニック系の50歳の副知事と、ナチスに関与したと言われる父親をもつオーストリアから帰化した56歳のボデイー・ビルでも名を馳せた男の戦いである。カリフォルニア州の人口の30%がヒスパニック系で、アジア系を含めた非白人の人口比率は相当高いため、票の動向は微妙と推測される。 米メディアの多くは上記の2名はいずれも政治家としての資質と指導力は未知数としている。両政党は5,000キロ離れたワシントンDCの本部からサクラメントの動きを注視しているのが現状である。
4.シュワルツエネッガーが選出されたら・・・
9月上旬現在、シュワルツエネッガー氏は選挙キャンペーンで自らの公約・政策を発表していない。選挙公告では「州の財政建て直し」、「州民に立脚した行政」というだけで、財源のために富裕層の増税や不動産税の新設など予想される具体的な政策については触れていない。民主党はもともと社会的課題・問題点にたいして関心が高く、カルパースのような公的年金の社会的責任投資にも理解を示してきた。社会的正義に基づく年金の運用が運用パフォーマンスの向上に特にプラスになるとは考えにくい。例えば、カルパースはエイズ薬価を後進国や低所得者向けに特別な低価格で販売せよ」とか「タックス・ヘブンに本社を移転して節税効果を挙げている企業は米本国に移籍せよ」と主張してきた。カルパースの言う通りに実施すれば、企業の利益は減少し、配当は低下することもあり得る。 今回の選挙において、シュワルツエネッガー氏は著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏やジョージ・シュルツ元国務長官を経済チームの共同議長に任命した。もし、シュワルツエネッガー氏が知事になれば、カルパースの外部理事の交代とともに、その投資方針が強者の論理を強める共和党色をどう打ち出すかが注目される。つまり、投資に関して深い知識・経験のないメンバーで構成されてきたと言われているカルパースの投資委員会や理事会が従来通りの方針で投資案件が決断されるとは思われない。もともと、共和党はウオール街に強く支持されてきた。カルパースのリターンの低迷をもたらしている「代替投資」や「不動産投資」を今後どうするのか?アクティビストと言われてきたカルパースの「議決権行使」を継続するのか見直しされるのか?「解らないものには投資しない」という伝統的投資方針を貫くバフェット氏が、シュワルツエネッガー氏にどのような影響を与え、同州の公的機関にどうのようにアドバイスするのか、市場関係者だけでなく、ガバナンス関係者も関心を抱いている。
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