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TIAA-CREFの素顔
(2004年10月05日)
1.静かなガバナンス活動を行う有力機関投資家
米国で株主活動を活発に行っているのはカルパ−スのほかにウイスコンシン州、ニューヨーク州、フロリダ州などの公的年金が目立つところであるが、その他にTIAA・CREF(全米教職員年金・保険基金;以下クレフという)のような私的年金もある。クレフは米国内の年金関連の資金2600億ドル(@\130として約34兆円)を運用し、ニューヨーク証券取引所で取引高において最大の機関投資家である。一方において国際分散している運用資金量が巨大であると同時にガバナンスに係わる株主活動も活発であるため、カルパースとともにその動向は日欧の企業も注目するところが多くなっている。以下はそのクレフの素顔についての記述である。
2.クレフのガバナンスを動かす男達
クレフは株式運用の対象としている3300社の中、約1700社についてガバナンスの実践状況を一覧にした独自のデータを整備している。このデータは業績推移は勿論のこと、各社の社外取締役の独立性、取締役の質、各種委員会の実態、取締役の相互乗入の有無、ストック・オプションを含めた報酬の中身、株主利益を阻害する政策の有無など25項目についてチェックする。これらのチェックはエクゼクテイヴ・ヴァイス・プレジデントで投資運用部門の主席カウンセラ−でもあるピーター・カプラン氏(65歳)が率いる5〜6人のグル−プで行われている。投資先各社をチェックしてガバナンスの観点から問題があると思われる企業があれば、まず手紙でガバナンス面の改善策を求める。企業側の反応にもよるが、必要に応じてケネス・ウエスト氏(67歳)が直接問題先企業を訪問する。ウエスト氏はシカゴの有力金融機関のハリス・バンクコープの頭取とモトロラの取締役を歴任している経歴から、発行体側のガバナンスに関する課題と問題点を鋭く把握できる。3人目の男は靴メーカーで有名なブラウン・グループの元社長のドルフ・ブリッジウオーター氏(67歳)で、ウエスト氏と同様に自らの取締役社長の体験を生かして投資先企業のガバナンスを熱心に分析している。このほかにIRRCから移籍した40歳代のガバナンスの専門家と、クレフ基金内で20年近くガバナンスを手がけてきた若手スタッフの二人も加わっている。このように、ウエスト氏ら2人はいづれも経営者として第一線をリタイアーした経験豊富なビジネスマンで、その年齢も60代後半のため地位やカネを求めるより、委託者利益と企業倫理からガバナンスを強く追求している。このためクレフの指摘するガバナンスの問題点の内容はバランスが取れており、株主側の立場から一方的なものではなく経営の実践的アプローチからの指摘が多いと定評がある。
3.クレフとカルパ−スの相違点
クレフもカルパースもその主たる業務が年金の受託・運用・支給であること、その運用額が巨額であり、ガバナンスについてもそのスタイルの点において共通点も多いが、運用、ガバナンスの取組み方、及び伝達方法に違いが見られる。

まづ第一に、カルパースは最近でこそ自家(インハウス)運用を若干開始したものの、伝統的に株式・債券を外部運用委託してきた。一方クレフは資金運用は自家運用しているため、変動の激しい金融市場に即した金融商品を自ら開発・運用して来た。1980年代には株式口座、金融商品口座、1990年代は国際株式口座、インフレ連動口座などユニークな運用口座を年金の顧客である米国内の委託者に選択させて来た。つまり30代の若年層には株式投資リスク比率の高い口座に資金の60〜70%を、残り30〜40%を安全な利回り追求型の債券・国債口座を選択するように勧め、50代の中高年層にはリスクの低い債券・国債口座の比重を多くさせ、ハイ・リスクな株式関連の口座への投資比重は低くするようアドバイスしている。一方カルパースは各顧客に対して運用に関してきめ細やかなサービスは行っていない。

第二にカルパ−スはガバナンスの問題点を指摘する場合時間をかけて多面的にチェックするものの、当該企業にその問題点を伝える場合は「フォーカス・リスト」として公表しメデイアを通して声高に世間の注目を集める。しかしクレフはカルパースのようなリストの発表は控え、相手側企業に手紙でその趣旨を伝え「静かに」改善を求める。1992年〜1996年にかけてクレフはガバナンスの改善要求の標的とした45社に手紙を中心に説得して、42社からポイズン・ピルの撤廃、社外取締役の選任など株主権利の改善を認めさせた実績がある。また、株主提案や会社提案には「YES」とは言わず、意見が異なれば「棄権」を表示する。これはカルパ−スと比較して目立たないが「静かなる」戦略といえよう。

第三点はカルパ−スは公的年金であるから、カリフォルニア州を背景にしており、13人の役員の中、州関連の役員は7人いる。基金の政策も州の方針の影響がないわけではないが、もともとカリフォルニアは映像(ハリウッド)、エレクトロニクス(シリコンバレー)、軍需産業、衛星放送、など世界をリードするパイオニアとしての企業・産業が数多く輩出してきた風土がある。このためカルパースも年金産業におけるガバナンスのパイオニアとして国際的にアピールする傾向が見られる。クレフは全米の教職員を対象にした私的年金基金で、取締約7人の中、社外取締役に元連銀総裁、メロン財団理事長、大学教授など5人がいる。世界の金融の中心地ニューヨークで年金のみならず投信、保険、信託業務などの幅広い分野で洗練された金融商品を数多く提供するとともに、地味ではあるが啓蒙的なスタンスでガバナンスを世界に発信している有力機関投資家と言える。なお、クレフのガバナンスの責任者カプラン氏は国際ガバナンス会議(ICGN)の2001年〜2002年の議長という名誉職に選任されている。
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