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2005年6月総会から見えてきた変化
株式持合解消に伴い、いわゆる安定株主が年々減少している中で、今年6月に全国証券取引所(5ヶ所)に上場する約2,000社が株主総会を開いた。 以下は今年の総会から見えてきた主な変化である。
1.発言する株主の増加
株式保有の主役はこれまでの金融機関中心から個人株主、外国人株主、及び年金・ファンド等の機関投資家に移りつつある。このため株主総会に おける議決権行使や総会の運営面で今までに見られない動きが出てきた。

第一は個人株主が株主総会に積極的に出席し、発言するようになったことである。話題性のある企業では過去最高の出席者を記録したところも 多かった。発言内容も財務内容をよくチェックした鋭い質問があった反面、マスコミの報道をなぞるような内容の乏しい意見も少なからずあった。 これらは企業側にとって参考となる前向きの意見や、他の多くの株主にもプラスとなるような発言も多く見られたが、経営が株主意見としてどこまで 真剣に耳を傾けたかは別問題である。

第二は内外の機関投資家の議決権行使である。機関投資家は総会に直接出席する代わりに、事前に会社側に賛否の議決権行使書を送付するところが多い。 今年は特に企業買収防衛策としてポイズン・ピルの導入など株主にとって微妙な議案も多かったため、多面的に検討し、「反対票」を投じた「考える」 機関投資家が見られた。6月の上場企業の総会では200社以上が授権資本枠の拡大を提案したが、大手企業3社(東京エレクトロン、横河電機、ファナック) で議案が内外の機関投資家などにより否決されたということは、議案内容によっては会社提案が採択されないという、全く新しい変化が見られるように なった。

第三は有力企業に対して,役員報酬の個別開示を求めるような株主提案があり、それなりに賛同を得たことであった。この種の株主提案自体は米国では 珍しくないが、ソニーで39%、トヨタ自動車で25%の株主の賛成票があったことは、「シャンシャン総会」時代が終り、株主側から経営側に重要 課題を投げかける場であると同時に適度の緊張をもたらす場面になったと言えよう。
2.注目された議案内容
こうした中で議案内容で見られた顕著な特徴の一つは、ライブドアとフジテレビによるニッポン放送株の争奪戦の影響である。「モノ申す株主」としてその存在感を高めてきた外国人株主や厚生年金基金連合会などは、企業買収防衛策について具体的な説明がなく株主にとってプラスでない議案には反対票を投じるスタンスをはっきりさせた。 今年の総会で会社側提案議案で特に議論を呼んだのは、
  • 機関投資家や外国人株主は、企業買収防止の方策としての毒薬条項は中身次第であるとし、株式数が増えて株式価値の希薄化を招く懸念あれば反対票を投じたところが多かった。
  • 社外取締役・社外監査役の選任では、独立した社外の取締役・監査役の必要性を認めつつ、実際の選任にあたっては、独立性に関して社外取締役・社外監査役の選任に「問題あり」として反対したケースがあった。
  • 適切な配当金の水準に関して、内外のファンドから配当余力のある個別投資先企業に対して強く要求してきたこともあり、増配や復配が多くなり、結果的に配当性向の改善が多く見られた。
言いかえると、経営に対する株主の理解・承認を得るに際して、議案自体が「株主価値を高める」のか「経営の保身」かという極めて常識的でありながら、これまで公に議論されることがなかった判断基準が賛否のチェック・ポイントとなったのが特徴と言えよう。
3.多様化した懇親会・イベント
消費財関連、外食関連、エンタテイメント関連の一部企業で、総会を集中日を回避して土曜日や日曜日に開催し、総会後に株主との食事懇談会、映画会、ライブのエンタテイメント等を行う企業が例年になく多く見られた。本来、参加者は議決権を有する株主に限るはずであるが、ライブの入場券ともいえる「議決権」がネットのオークションでそれなりの値段で取引されている事実がわかり、発行企業側は本来の株主総会とその後の催しが総会の趣旨と異なる参加者が多くなることについて、新たな対策を講じる必要もでてきた。 しかし消費財関連やサービス業界にとって、株主懇親会やイベントは一般個人株主に対するPR効果はあるものの、こうした型での株主との交流で経営上どんなメリットがあるのかわかりにくい。そのため、多くの重厚長大の大手企業やBtoB関連企業はIRは行なうが、PR的な色彩が強い同様な食事懇親会やイベントを将来積的に開催するとは思われない。
4.総会のIT化(電子投票)
2002年4月から開始された議決権の電子投票は、議決権行使の方法の多様化を図って株主の便宜を高めるために、インターネットや携帯電話を利用しての投票である。重要な決議事項が増えるなか、多くの株主の議決権行使を促し広く株主の意向を聞くため、使い勝手のよいネット投票や携帯投票が毎年増加してきた。今年はネット投票採用は300社を超えたと言われる。携帯電話による投票も松下電器、ソフトバンク、ホンダなど100社以上となり、総会のIT化は着実に進んでいる。一方、株主総会を中継したり、事後にその状況をネット配信する企業もあり、経営者側も株主総会をネットを通じて株主との対話重視の姿勢に転換するところも見られるようになった。

なお、総会の電子投票とは直接関係はないが、地方自治体の選挙に係わる電子投票でトラブルが4件起き、裁判所はこうした選挙を「無効」と判断し、結果的にやり直しとなった事例がある。議決権行使の電子投票ではこの種のトラブルは今のところ聞いていないが、今後個人株主が多くなり投票が一度に集中した場合、オーバー・ヒートで同様のリスクがあることは、電子投票システム大手各社の今後の課題となる。
5.総会屋は沈静、「モノ申す株主」が台頭
一昔前まで、殆んどの企業は株主総会には総会屋が出席することを前提として「想定問答」や「総会のリハーサル」を用意周到に行ってきた。当局の発表では、総会屋の数は昨年末で400人以下と過去最低となり、今年、総会屋が出席した企業数は12〜13社だけで、かつてのような動きは減少傾向といえる。 一方で最近の現象として、経営側に「モノ申す」個人株主はリストラなどで退職した一部の「OB株主」、人権・労使闘争関連と思われる「組合株主」、電力会社で毎年見られる「環境保護株主」、弁護士らの集まった「株主オンブスマン」、新聞報道をなぞるだけの「目立ちがり屋の個人株主」など様々のタイプの発言者が見られる。このような株主の発言が建設的であれば、経営側も他の株主も参考になる。しかし、個人株主の中には、株主優待策など自分自身の利益追求のための発言や、当人の不遇の時代に係わる経営責任の追及など株主価値向上とは直接関係ない発言もみられた。 いずれにせよ、総会屋に代わって発言する個人株主の台頭に伴い、総会は株主と経営側の対立の場から,会話の場になりつつあるといえよう。
6.進む総会の分散化
2005年6月に株主総会を開催したのは、全国証券取引所(5ケ所)2054社、ジャスダック593社、マザーズ48社、ヘラクレス50社の計2,745社であった。かつて、3月決算会社の株主総会は6月の最終営業日の前日に開催する企業が圧倒的に多かった。これは総会屋などウルサイ株主の出席を分散化又は回避するために集中開催をしてきたと言われてきた。しかし、「シャンシャン総会」から「開かれた株主総会」になるにつれ、1995年のピーク時で96%となった集中日開催は年々低下し、今年は60%を下回った。しかし、この低くなった比率も分散化が進んでいる海外と比較するとまだ異常に高い。

今年の株主総会の集中日は29日で、昨年より90社少ない1,590社(全体の57.5%)が集中日に開催した。第2集中日の6月28日には366社(同13.3%)、3番目に多かった24日は318社(同11.6%)に開催した。6月株主総会で早めに開催したところはメッツ、カラカミの6月7日。総会開催日の幅広い分散化が毎年着実に行われているのは事実である。
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